小倉文月の雑記

老後は京都で暮らしたい

映画『コーダ あいのうた』を観てきました

『ドライブマイカー』を差し置いて(?)作品賞受賞したということで、『コーダ あいのうた』を観てきました。

 

gaga.ne.jp

 

コーダはアメリカで生まれた言葉で、親の聴覚に障害を持つ子供のようだが、具体的には聴覚に障害を持つ親に育てられた子供を指すのだと思う。

 

本作のように4人家族中で耳が聞こえるのはひとりという設定だが、音声より先に視覚=手話で言葉を身に付けるという想像したことも無い環境があるという事に気づけただけでも本作を観たことは意義深い。

 

漁業を営む父兄を、漁とコミュニケーションの双方でサポートする妹が、聾唖家庭を揶揄されながら通う学校で合唱を初め、献身的な恩師に見出され、家族の反対を乗り越えて音楽大学に合格する、というメインストーリーに、同じく音楽大学受験を目指す憧れの同級生とのラブストーリーが添えら得ている作品。

 

印象に残っているシーンは、母娘の会話で、生まれた娘の聴覚に異常が無かったと知って、壁が出来て上手く子育てが出来ないという心情を吐露したくだりです。娘の問いかけに対して、耳が聞こえて良かったと思っている、と答えると思い込んでいたので、予想外の言葉にとても驚きました。障害が無くて良かった、と思うに決まっている、と考えてしまう事こそが、耳が聞こえる側が反射的に感じる優越感なのかもしれません。娘に、家族の一員として、ずっとサポートをして貰いたい、と強く願っていたのも、色々な葛藤からの気持ちだったのかな、とこのシーンを通じて伝わって来ました。

 

お互いの本音を語り合って、一歩先に進めて良かったなと思いました。

 

兄が妹を家族に縛りつけたく無いと思う気持ちや、父親が娘の才能に気づいて受験を後押しする場面も心を打たれますが、私は、この母の本音に心を打たれました。

 

観て良かった、心に残る作品になりました。